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処遇改善加算の注意点:詳細解説

障害福祉サービスのブログとしては第1回目になりますが、今回は障害福祉サービス事業者の皆様にとって重要なテーマである「処遇改善加算」について、注意すべきポイントを詳しく解説します。

処遇改善加算とは

処遇改善加算とは、介護職員の賃金改善を目的とした加算制度です。この制度は、介護職員の処遇改善を通じて、サービスの質の向上を図ることを目指しています。

賃金改善の基準点

賃金改善の基準点は、原則として、初めて処遇改善加算または交付金等を算定した年度の前年度における賃金水準です。ただし、職員構成の変動等により、前年度の賃金水準を推計することが困難な場合や、事業所を新規開設した場合は、適切な方法で算出した賃金水準を基準とすることができます。

賃金改善の対象となる賃金

賃金改善の対象となる賃金は、基本給、手当、賞与など、労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当です。ただし、通勤手当や扶養手当など、労働と直接的な関係が薄く、労働者の個人的事情により支給される手当は含まれません。

賃金改善の方法

賃金改善の方法としては、基本給の引き上げや、「決まって毎月支払われる手当」の支給などが挙げられます。時給や日給を引き上げることも、基本給の引上げとして扱われます。

賃金改善額に含まれるもの

賃金改善額には、法定福利費(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料など)の事業主負担増加分や、法人事業税における賃金上昇分に応じた外形標準課税の付加価値額増加分を含めることができます。

賃金改善実施期間の設定

賃金改善の実施月は、算定対象月と同一でなくても構いませんが、事業者が任意に選択することとされています。ただし、賃金改善の配分については、予め労使の合意を得るように努める必要があります。

前年度からの職員の減少や入れ替わりがあった場合

前年度から事業所の介護職員の減少や入れ替わり等があった場合、賃金水準を引き下げていないことを確認する必要があります。ただし、事業規模の縮小に伴う職員数の減少や、職員の入れ替わりにより賃金総額が変動する場合は、一定の方法で調整することができます。

賃金改善に関するQ&A

Q: 賃金改善の基準点はいつの時点になるのか?

A: 原則として、初めて新加算等を算定した年度の前年度における賃金水準です。

 

Q: 前年度から事業所の介護職員等の減少や入れ替わり等があった場合、どのように考えればよいか?

A: 賃金水準を引き下げていないことを確認する必要があります。

 

Q: 「決まって毎月支払われる手当」とはどのようなものか?

A: 労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当です。

 

Q: 時給や日給を引き上げることは、基本給等の引上げに当たるか?

A: 基本給の引上げとして取り扱って差し支えありません。

 

Q: キャリアパス要件及び職場環境等要件を満たすために取り組む費用について、賃金改善額に含めてもよいか?

A: 賃金改善額に含めてはなりません。

 

Q: 最低賃金を満たしているのかを計算するにあたっては、新加算等により得た加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるのか?

A: 新加算等の加算額が、予定し得る通常の賃金として、毎月労働者に支払われているような場合には、当該加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなります。

 

Q: 賃金改善額に含まれる法定福利費等の範囲について。

A: 法定福利費(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料等)における、新加算等による賃金改善分に応じて増加した事業主負担分を含みます。

 

Q: 賃金改善実施期間の設定について。

A: 賃金改善の実施月は、算定対象月と同一でなくても差し支えありませんが、配分のあり方について予め労使の合意を得るよう努めることとされています。

 

Q: 旧3加算及び令和6年2月からの補助金(以下「補助金」という。)の支給時期と、新加算の支給時期を変更させる場合の取扱い如何。また、旧3加算及び補助金のそれぞれで支給時期が異なる場合であって、新加算への移行に当たり支給時期を揃えたい場合の取扱い如何。

A: 支給時期を変更する場合、移行前と移行後の支給時期のパターンによって、それぞれ対応が必要です。

 

Q: 支給時期の見直しに伴う「重複期間」の賃金改善の方法として、基本給等ではなく一時金を活用して行った場合であれば、ベースアップ等加算のベースアップ等要件(賃金改善額の3分の2以上をベースアップ等により改善)を満たすことができなくても問題ないか。

A: 問題ありません。

 

Q: 賃金改善を2か月遅れで行っている事業所が廃止になった場合、最終の支払で3か月分の賃金改善を行う必要があるか。

A: 最終の賃金の支払までに、加算額以上の賃金改善を行う必要があります。

 

Q: 実績報告において賃金改善額が新加算等の加算額を下回った場合、加算額を返還する必要があるのか。

A: 賃金改善額が加算額を下回った場合、加算の返還の対象となります。

 

Q: 「令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のペースアップ」は処遇改善加算の算定要件ではなく、各介護サービス事業所・施設等で目指すべき目標ということか。

A: そのとおりです。

 

Q: 繰り越しを行う場合、労使合意は必要か。

A: 繰り越しを行うことについて、予め労使の合意を得るよう努める必要があります。

 

Q: 社会福祉法人において繰り越しを行う場合、会計上、繰越金をどのように取り扱えばよいか。

A: 令和7年度分の賃金改善に充てる資金として、会計上、積立金に計上することができます。

 

Q: 算定対象月が令和6年度中であっても、賃金改善を実施した期間が令和7年度となった場合、当該賃金改善の原資とした加算の額は「令和7年度への繰越分」に含めるのか。

A: 賃金改善を実施した期間の一部が令和7年度に掛かることになる場合、令和6年度分の通常の加算の配分に含まれるため、「令和7年度への繰越分」には含めません。

 

Q: 通知上、「令和7年度の賃金改善実施期間の終わりまでに事業所等が休止又は廃止となった場合には、その時点で、当該繰越分の残額を、一時金等により、全額、職員に配分しなければならないこととする。」とされているが、ある事業所が休止又は廃止になった場合に、同一法人内の他の事業所の職員に対し「令和7年度の繰越分」を用いた賃金改善を行ってよいか。

A: 休止又は廃止となった事業所の職員に配分することを基本としますが、新加算等を一括して申請する同一法人内の事業所の職員に限り、「令和7年度の繰越分」を用いた賃金改善の対象としてもよいとされています。

 

Q: 賃金改善の方法について、労使で事前に協議する必要はあるか。

A: 処遇改善計画書の内容及びキャリアパス要件Ⅰ~Ⅲを満たすことの書類については全ての介護職員に周知することが必要ですが、万が一就業規則の不利益変更に当たるような場合にあっては、合理的な理由に基づき、適切に労使の合意を得る必要があります。

 

Q: 事業悪化等により、賃金水準を引き下げることは可能か。

A: サービス利用者数の大幅な減少などによる経営の悪化等により、事業の継続が著しく困難であると認められるなどの理由があっても、賃金水準を引き下げる場合には、合理的な理由に基づき適切に労使の合意を得る必要があります。

 

Q: 基本給は改善しているが、賞与を引き下げることで、あらかじめ設定した賃金改善実施期間の介護職員の賃金が引き下げられた場合の取扱いはどうなるのか。その際には、どのような資料の提出が必要となるのか。

A: 賃金全体の水準が引き下げられた場合については、特別事情届出書を提出する必要があります。

 

Q: 一部の職員の賃金水準を引き下げたが、一部の職員の賃金水準を引き上げた結果、事業所・施設の職員全体の賃金水準は低下していない場合、特別事情届出書の提出はしなくてよいか。

A: 事業所・施設の職員全体の賃金水準が低下していない場合は、特別事情届出書を提出する必要はありません。

 

Q: 令和5年度の実績報告書の「加算以外の部分で賃金総額を下げないことについて」の記入欄において、「本年度の賃金の総額」欄には、令和5年度分(令和6年2月・3月分)の補助金による賃金改善の額を含めた金額を記載するのか。

A: 令和5年度の実績報告書別紙様式3-12 (3) 「加算以外の部分で賃金総額を下げないことについて」の記入欄において、令和5年度と令和6年度の賃金額を適切に比較するため、同① (ア) 「本年度の賃金の総額」欄には、令和5年度分(令和6年2月・3月分)の補助金を原資とする賃金改善額を含めない賃金の総額を記載すること。

まとめ

処遇改善加算は、介護職員の賃金改善を支援するための重要な制度ですが、適切な運用を行うためには、賃金改善の基準や方法、対象となる賃金、実施期間の設定など、様々な注意点を理解しておく必要があります。

この記事が、皆様の事業運営の一助となれば幸いです。

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